インターネット上には、人気の映画やアニメ、ドラマなどを「無料で見られる」とうたった動画サイトが多数存在します。一見すると便利に思えるかもしれませんが、その多くが著作権法に違反した違法サイトであり、利用者自身にも大きなリスクが伴うことを理解する必要があります。
まず知っておいてほしいのは、著作権で保護された映像作品を、著作権者の許可なくインターネット上に公開することは、著作権法第119条により明確に禁じられているということです。著作権法では、たとえ個人が無償でアップロードした場合であっても、「公衆送信権の侵害」に該当し、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。
違法にアップロードされた動画を見る行為に関しても、近年の法改正により厳しく取り締まられるようになっています。2021年の著作権法改正により、明らかに違法にアップロードされたコンテンツであると知りながらダウンロードを行った場合、利用者側にも2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があると明記されました。これは音楽・映画・漫画・書籍・雑誌などすべての著作物が対象であり、「自分だけが見るから」「ダウンロードではなくストリーミング再生だから大丈夫」という認識はすでに通用しない時代となっています。
また、こうした違法アップロードサイトを利用したユーザーのアクセス情報は、通信ログやIPアドレスなどを通じて捜査機関により特定されることもあります。過去には、違法動画共有サイトを頻繁に利用していた一般ユーザーに対して、家宅捜索や警告書の送付が行われた事例もあります。違法アップロードに直接関与していなくとも、常習的に視聴していた履歴が残っていれば、違法行為の「共犯的関与」と見なされる可能性すらあるのです。
違法動画サイトの利用においてさらに深刻なのは、サイバー犯罪への巻き込まれです。たとえば動画を再生しようとクリックしただけで不審なソフトが自動的にダウンロードされたり、スマートフォンやパソコンにウィルスやスパイウェアが感染し、個人情報やクレジットカード情報が盗まれる被害が多発しています。感染後は、画面に不審な広告が大量に表示されたり、操作不能に陥るといった被害も報告されています。
さらに悪質なのがフィッシング詐欺です。動画サイトを模した偽ページで「年齢確認のためにクレジットカード情報を入力してください」「アカウント作成で今すぐ視聴可能です」と表示され、ユーザーをだまして情報を入力させようとする手口が横行しています。ここで入力された情報は闇市場に流出し、海外での不正利用や高額なサブスクリプション契約など、取り返しのつかないトラブルに発展することもあります。
違法にアップロードされたコンテンツを提供するサイトの多くは、海外の無名サーバー上で運営されており、ドメインも頻繁に変更されるため、責任の所在を特定するのが非常に困難です。そのため、トラブルが起きても運営者に連絡を取ることはまず不可能で、被害を受けても自己責任という形で泣き寝入りするケースがほとんどです。
たった一度の「無料で見たい」という軽い気持ちが、法的リスクや金銭的な損害、自分や家族の情報漏洩といった深刻な問題を引き起こしかねないという現実を、今一度しっかりと受け止める必要があります。動画を楽しむのであれば、正規配信サービスを利用し、安心・安全な環境でエンターテインメントを楽しむことが、視聴者としても責任ある行動だと言えるでしょう。